1.6 行列と回転>
 
行列(matrix)は元々は連立方程式の解法として始まりましたが、連立方程式の解法の他、線形写像や応力テンソル、歪みテンソル、座標の回転などにも利用されています。
ここでは、座標の回転を例にとって行列を考えてみましょう。
行列による回転は応力や歪みの方向成分を計算する際に役立ちますし、応力、歪みテンソルのところでも役に立ちます。
 
 
ここでは図に示すような、平面内での座標の回転を考えます。
 
(x,y):元座標系での点Pの座標
(x',y'):新座標系での点Pの座標
α:点Pを元座標x-yx軸から見た角度
α':点Pを新座標x'-y'x'軸から見た角度
θ:新座標は元座標に対して回転角度
 
とすると、
 
 
となります。 
ここで、新座標値x'を元座標xyで表すと
 
 
ちなみに、
 
加法定理:
 
であることを使っています。 
同様に新座標値y'を元座標xyで表すと
 
 
同じく
 
加法定理:
 
を使っています。 
従って、x'y'は次のように表されます。
 
 
これを行列で表せば、
 
 
となりますから、座標系を回転させたときの座標変換は「座標変換行列とベクトルの積」で表すことができるわけです。 
また、x'y'を以下のように見れば
 
 
 
つまり、ベクトルを表す単位ベクトルexey、すなわち基底を変換する行列と見ることもできます。
この、基底、基底を変換するという考え方は後にテンソルで重要になります。

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