<2.15 線積分の例>
線積分の例として、常に動く方向と逆方向に一定の摩擦力Ffが働く場合に、点P→点Qの経路における仕事Wについて考えて見ましょう。
つまり、摩擦力による仕事がどうなるかということですね。
ここで、
として、図に示すC1とC2の二つの経路について考えます。
まず、C1経路の場合は
l1:C1経路の長さ
となります。
一方、C2経路の場合には
l2:C2経路の長さ
となり、当然のことですが摩擦力による仕事W1とW2はC1、C2の経路の長さl1、l2によってその大きさが決まり、また、W1とW2では異なることがわかります。摩擦力が一定なのですから、距離によって仕事量が違うのは当然ですよね。
また別の場合の例として、働く力が重力の場合を考えてみましょう。
図に示すように-y方向に一定に作用する場合に質量mを経路C1、C2に沿って移動する場合を考えます。
Fx=0、Fy=-mg
ここでΔs1、Δs2の間でなされる仕事は力のベクトルFと移動ベクトルΔsとの内積になりますから、経路C1では、
よって、経路C1では
となります。
同様に経路C2では
となり、始点と終点が同じであればどの経路に沿って積分しても同じ値になることがわかります。
ここで、このFのような力を保存力というのはご存じの通りです。
また、保存力ではエネルギー保存則が成り立ちますので、閉曲線に沿って一周積分すると、
となり、仕事はゼロになります。
ここで、
というのは経路に沿って一周ぐるりと積分するという意味です。