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コンピュータの性能を考える

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CAEを利用するうえではコンピュータが必須です。1940年代後半にコンピュータが現れ、このコンピュータが弾道計算のような特殊な利用目的でなく一般的な科学技術計算に利用できるようになったことにより、有限要素法が産業界で利用できるようになりました。

しかし1970年代、1980年代は解析を行うために利用できるコンピュータは計算速度が遅くて十分な計算ができないか、ある程度の計算はできるが非常に高価なスーパーコンピュータを利用せざるを得ない状況でした。それが1990年代になってSUNHPに代表されるUNIX WSが市場に出てくると価格、性能的に十分、解析の為の計算ができるようになりました。 4CPUで2GB程度のメモリーを搭載したコンピュータは1990年頃で1億円程度、1900年代末で1000万円位していたかと思います。 これが2000年代になるとIntelAMDに代表される市販CPUの性能が飛躍的に早くなり価格も4CPUで2GB程度のメモリーで500万円程度、そして2010年になると20万円程度で入手できるようになっております。

このようにコンピュータの性能は飛躍的に向上し、価格は驚異的に安くなっております。このコンピュータの性能を判断する方法にはいくつかありますので、ここで紹介させて頂きます。まず項目だけ列挙すると

1.  公になっているコンピュータシステムの整数演算、浮動小数点演算の性能を調べる。

2.  公になっているグラフィックスの性能を調べる。

3.  公になっているアプリケーションの性能を調べる。

(ア)    Nastran

(イ)    LS-Dyna

(ウ)    ABAQUS

(エ)    Fluent

(オ)    Star-CD

等々

4.  自分が利用するアプリケーションで自分のデータを用いてベンチマークテストを行う。

5.  その他の検討事項と全体的な性能のバランスを調べる。

等があるかと思います。

 

以下に上記の各項目について書かせて頂きます。

 

 

−コンピュータシステムの整数演算、浮動小数点演算の性能−

コンピュータの性能を公に公開しているサイトとして「The Standard Performance Evaluation Corporation (SPEC)」というサイトがあります。

  http://www.spec.org/

ここには各種の性能評価が載せてあるのでコンピュータシステムを検討する際に、一つの評価として利用すると、どのようなコンピュータを選んだらよいか判断することができます。評価の詳しい説明は  http://www.spec.org/cpu2006/ の中に書かれておりますが以下に概要を書かせて頂きます。

CPU2006CINT2006C及びC++コンパイラを使って書かれており、CFP2006Fotran及びCC++で書かれております。そして評価を客観的なものにするために実務的なアプリケーションで評価しております。

CINT2006は整数演算ベンチマークで12個の評価アプリケーションで構成されております。整数演算と説明しているように整数演算を主体にしたベンチマークで構成されております。そのアプリケーション名と概要は以下の通りです。

l   400.perlbench             プログラミング言語

l   401.bzip2                 圧縮処理

l   403.gcc                   C コンパイラ

l   429.mcf                   組み合わせの最適化

l   445.gobmk                 人工知能---囲碁

l   456.hmmer                 遺伝子配列の検索

l   458.sjeng                 人工知能---チェス

l   462.libquantum            物理学/量子計算

l   464.h264ref               ビデオ圧縮処理

l   471.omnetpp                離散イベントシミュレーション

l   473.astar                 経路探索アルゴリズム

l   483.xalancbmk             XML 処理

 

CFP2006は浮動小数点演算ベンチマークで、17個の評価アプリケーションで構成されております。浮動小数点演算と説明しているように浮動小数点演算を主体にしたベンチマークで構成されております。そのアプリケーション名と概要は以下の通りです。

l   410.bwaves                流体力学

l   416.gamess                量子化学

l   433.milc                  物理学/量子色力学

l   434.zeusmp                物理学/CFD

l   435.gromacs               生化学/分子動力学

l   436.cactusADM             物理学/一般相対性理論

l   437.leslie3d              流体力学

l   444.namd                  生物学/分子動力学

l   447.dealII                有限要素解析

l   450.soplex                線形計画法、最適化

l   453.povray                画像レイトレーシング

l   454.calculix              構造力学

l   459.Gems                  FDTD 計算電磁気学

l   465.tonto                 量子化学

l   470.lbm                   流体力学

l   481.wrf                   気象

l   482.sphinx3               音声認識

この性能はCAEでの利用で考えた時、解析の中心であるソルバーでの処理時間を考える上での指標になります。特にCFP2006の性能が参考になるかと思います。

 

CPU2006の結果はSun UltraSparcII 296MHz1とした時の相対性能で、幾何平均した結果です。例えば IBM System x3500 M3(Intel Xeon X5680)CINT2006は、それぞれのスコアが 

32.3

20.9

28.7

50.3

28.4

52.3

28.7

635

43.8

28.7

22.6

39.2

そして、そのlog値が

3.475

3.040

3.357

3.918

3.346

3.957

3.357

6.454

3.780

3.357

3.118

3.669

相加平均が 3.735565 になり、 そのexp(3.735565)は 41.91171 になり、SPECint2006の数値と一致します。

計算は以下の計算をし、結果をexp(logGm)したものです。

equation

 

 

 

参考に書かせて頂きますと、UltraSparc II296MHz1998年頃に出荷された製品です。現在の製品は単純な相加平均で85倍程度、幾何平均で42倍程度の性能を実現していることが判ります。 ムーアの法則からすると1.5年で2倍の高速化なので相加平均で考えると、ムーアの法則に近い性能向上を実現しています。

 

それでは主なCPUでの性能の変化を最近の10年、15年の期間をグラフで表現してみます。

   整数演算性能の推移

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


10年で整数演算の性能が35倍  / 1995年から2005年での変化

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


15年で整数演算の性能が113倍  / 1995年から2009年での変化

 

 

 

   浮動小数点演算性能の推移

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


10年で浮動小数点演算の性能が16倍  / 1995年から2005年での変化

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


10年で浮動小数点演算の性能が60倍  / 1995年から2009年での変化

 

 

上記のCPU2006の性能を参考にどのシステム自社で利用するアプリケーションに適しているか判断する材料になります。 CPUを基本に考えていますがシステム単位に計測しているのでアプリケーションを利用するためのシステムの評価として利用することが十分に可能です。

 

 

 

−グラフィックスの性能−

CAEではモデル作成と最後のポスト処理でグラフィックス性能が必要になってきます。このグラフィックス性能もコンピュータの性能を公に公開しているサイトである「The Standard Performance Evaluation Corporation (SPEC)」で公開されております。

       http://www.spec.org/gwpg/gpc.data/vp11/summary.html

しかし最近の結果はHPDell2社しか載っておりません。GraphicsNVIDIAATIの主のものだけです。 ここでは2008年に取得してグラフ化したものを掲載しておきます。

1990年代はUNIX WSと、専用のグラフィックスボードでの評価結果が出ておりましたが、2000年頃からPC+Windows+市販Graphicsの構成が一般的になりました。CAEでは要素数の非常に多いモデルを表示する必要がない限りは中レベルのGraphicsで十分です。以下のグラフで言うとFX1700程度、現在出荷されている製品だとFX1800になります。CAEでも要素数の多いモデルを表示したり、複数表示して比較するような場合はFX3800以上のGraphicsが必要になってきます。

 

 

 

 

catia-02

NVIDIA
Quadro
FX 570

NVIDIA
Quadro
FX 1500

NVIDIA
Quadro
FX 1700

NVIDIA
Quadro
FX 3700

NVIDIA
Quadro
FX 4600

NVIDIA
Quadro
FX 5600

ATI
FireGL
V5600

ATI
FireGL
V7700

3dsmax-04

37.07

30.63

42.73

44.13

44.19

44.15

44.26

44.77

catia-02

47.36

40.44

50.13

54.35

54.4

56.52

42.19

43.28

proe-04

38.81

31.18

47.66

52.76

52.73

54.37

42.01

43.54

sw-01

52.14

41.16

67.32

92.26

94.14

99.17

94.3

101.03

ugnx-01

13.14

10.66

19.84

28.23

27.05

32.06

30.39

56.43

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


−アプリケーションの性能−

CAEで利用するコンピュータシステムを検討するうえでは、利用するアプリケーションの性能評価を参考にするのが、より具体的な検討が可能になります。その為には対象となるアプリケーションを開発・販売しているベンダーのサイトあるいは外部の評価期間が評価した結果を調査するのが最適です。 公開されている主なホームページとしては以下のアプリケーションを参照することが可能です。

 

(ア)    Nastran

Nastranに関してはMSC社のホームぺ時にV69の時代から、最近のMD Nastranまでのベンチマーク結果が載っています。1990年代や2000年代の初めはスーパーコンピュータ(ベクター)の結果も載っていましたが最近はIntel,OpteronPowerといったCPUを使ったシステムが主流になってきています。以下のURLMSC社のベンチマークが載っているURLです。

http://www.mscsoftware.com/support/prod_support/nastran/performance/

 

 

MD Nastran

経過時間()

 

 

 

xx0wmd0

md0mdf1

xl0imf1

xx0xst0

 

 

 

3.8mDOF

0.04mDOF

0.47mDOF

2.45mDOF

 

 

 

SOL103

SOL108

SOL108

SOL101

HP/BL465c

AMD

2.4GHz

16467

1385

2074

1169

HP/BL860c

IA64

1.6GHz

24194

1711

1296

2319

Intel

Nehalem

2.93GHz

17651

922

1235

971

Intel

Hapertown

3.2GHz

21319

1167

2629

1516

IBM 570

Power6

4.7GHz

13699

911

1016

1618

Sun

Xeon/5260

3.33GHz

21428

1153

2575

1324

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


これを図示したのが以下のグラフである。これは1CPUでの計算を示したものであr

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(イ)    LS-Dyna

LS-DynaのベンチマークはTopCrunchに載っています。このサイトはFAQにも載っていますが

What is the objective of TopCrunch?

The objective of TopCrunch is to track the aggregate performance trends of high performance computer systems and engineering software. Instead of using a synthetic benchmark, actual engineering software applications are used with real data and are run on high performance computer systems.

Who runs TopCrunch?

Prof. David Benson at UCSD runs TopCrunch, with support from his students, post-docs, research engineers, and web site support from the Jacobs School of Engineering.

の通りである。 URL

  http://www.topcrunch.org/

でここに多くのLS-Dynaのベンチマーク結果が載っています。

neon_refined_revisedの結果を 2010815日に抽出した一部の結果を載せると以下のような結果になります。

 

 

 

neon_refined_revised

n_cpus

2

4

8

16

32

64

128

256

Intel X5160 3.0G

4431

3019

1536

823

557

 

 

 

Intel W5580 3.2GHz

 

 

731

446

 

 

 

 

Itanium 1.669Ghz

 

 

 

 

 

296

205

166

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(ウ)    ABAQUS

ABAQUSのベンチマークは以下のURLに載っています。

http://www.simulia.com/support/sup_systems_info.html

 

(エ)    Fluent

Fluentのベンチマークは以下のURLに載っています。

http://www.fluent.com/software/fluent/fl6bench/fl6bench_6.3/index.htm

 

 

(オ)    Star-CD

Start-CDのベンチマークは以下のURLに載っています。

              http://www.cd-adapco.com/products/STAR-CD/performance/406/index.html

 

最近のベンチマークはIntelNehalemが流体や衝突解析では速くなったので流体のFluentStar-CDではベンチマーク結果は更新されなくなってきています。ハードベンダーも差別化がなかなかできなくなったこと、ベンチマークを行うエンジニアがいなくなったこと等により、最新の結果が出なくなったものと思われます。

 

 

 

 

−自分が利用するアプリケーションで自分のデータを用いてベンチマーク−

CAEで利用するコンピュータシステムを検討するベンチマークでは、やはりそのシステム上で主に利用するアプリケーションで、実際に利用する、あるいは利用するデータに近いデータで評価を行い、もっとも性能が良いシステムを選択することが重要です。

 

 

 

−その他の検討事項と全体的な性能のバランス−

CAEで利用するコンピュータシステムを検討する時は、ベンチマークは一番重要です。その時に注意しておきたい事項はベンチマーク環境と自社で実際に購入する環境が同じか否かです。 ベンチマーク環境については特に指定しない限りは、担当者としては良い結果を出したいのでCPUは同じとしてもメモリー量、ディスク構成、ネットワーク環境等が違い、実際に購入してみたらベンチマーク結果と購入したシステムでの実行時間が2030%も違うという例が出ています。 この辺を十分、確認してベンチマークをすることをお勧めいたします。  ベンチマークする前に構成が決まっていなくても予算はある程度決まっているか、決まっていなくても会社で出せる金額はある程度把握できるかと思います。 

 

これ以外に注意したい点としてはサポートです。ポイントとしては

 ・問題が発生した時に直ぐに対応してくれ、問題解決に導いてくれる会社であること。

 ・コンピュータだけでなくCAEアプリケーションや他のソフトやネットワークと関係した問題が発生した時に、

全体が見渡せ、交渉もできるサポートであること。

等ができるエンジニアや営業であることが重要です。

 

 

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